チンチラの恋愛事情は複雑だ。すんなりカップリングとなればいいが、縄張り意識の強いチンチラはそうはいかぬ。
威嚇やオシッコをかけるだけで済めばいいが、威嚇が強すぎて相手に噛みつくこともあるのだ。
ボロいアパートの我が家には体重400gほどの小さいチンチラがいた。シナモン色のチョコ♂である。
ある日、我が家の絶対的な主(あるじ)ママゴンが『チョコちゃん一人じゃ何となく寂しいし・・・』と言い出した。しばらくして『ちょっと出掛けてくる。』と言い残しどこかへ行く。
半日後、顔や背中など身体の大半は真っ黒だが、お腹が真っ白の見事なブラックパールの女の子を抱っこしながら帰ってきた。
ママゴン:『チョコ♂のお嫁さんだよ。名前はマロン♀』
ブラックパールの女の子は目がとても大きくクリクリだ。人間で例えると、エヴァの綾波レイに灼眼のシャナを掛け合わせて、最後に北川景子風にした美人さんである。
早速、チョコに逢わせるが、チョコは驚いて激しく威嚇する。まあ仕方ない。いきなり道端でとんでもない美人さんに声を掛けられる童貞ボーイの心境だ。
『壺いりません。FXのお誘いもNGです!』という感じだろう。俺はわかるぞ!
その日は別々のケージに入れて二匹の様子を見ることにしたが、その日からチョコ♂の発情鳴きが始まった。恋の始まりである。
※この物語に登場する人物及びチンチラや関係事象はすべてフィクションであり、実在の人物やチンチラなどとは一切関係ありません。